私は泣き疲れたのか、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
午後18時夕焼けチャイムの音で目を覚ました。
「あ!夕焼けチャイムだ。帰らないと」
泥だらけでボールを抱えていた健斗の姿が脳裏によぎる。
「健斗。せめてサヨナラくらい言わせてほしかったよ…」
わたしはベランダに出て、健斗の家の方に向かってそう言った。
よく、ベランダ越しで会話をしてきた。
ここから「健斗」と名前を呼べば彼はいつも出てきてくれた。
もう、私がどれだけ「健斗」と叫んでも彼は現れない。
あの、子どもみたいな笑顔を見れることはないんだ。
心の中に大きな穴が空いて、もう、健斗に会えない。頭の中はそれしかなくて、誰の話も景色も認識できなくなって、ただ私は今くらい闇の中にいるってこと。それだけが分かった。