いつもは健斗とふざけながら帰っていた通学路。1人だととても長く感じる。
健斗の住んでいた家は静まり返っていた。
家が隣だと嫌でも思い出しちゃう。
「ただいま〜」
「おかえり。健斗くんは…?」
「お母さん…健斗いなくなっちゃった…。どこか遠いところに転校したって…」
お母さんの顔を見た私は心に溜まっていたものが溢れ出してきて、目が腫れるまで泣いてしまった。
お母さんはそんな私を優しく抱きしめてくれた。温かい温もりが懐かしくて、それがまた健斗を思い出して苦しくて、私はいつまでも、いつまでも泣いていた。
「健斗くん、引っ越しちゃったのね。寂しくなるわね。だって、千紗は生まれてからずっと健斗くんと一緒だったものね。」
「もう、会えないのかなぁ健斗に。」
私は声を震わせながらお母さんにそう尋ねた。
「生きていれば、会えるわよ。きっと、健斗くんも千紗にさようならを言うのが怖かったのよ。そしたら千紗泣いちゃうでしょ?健斗くんはきっと最後に千紗の泣き顔じゃなくて、笑顔が見たかったんじゃないかな」
お母さんは私の背中を優しく撫でながらそう語る。
「私、最後に健斗に怒っちゃった。笑顔じゃなくて怒り顔みせちゃったよ…」
「そっか…。でも。いつもと変わらない千紗の姿が見られて健斗くんはきっと嬉しかったと思うよ。」
「うん…」