「私…だから?」

「そうだよ。」

私から目を逸らした篠島くんは人差し指で鼻の下を擦りながらもう一度私をチラリと見た。

彼の頬が少し赤いのは夕日のせいなのか、それとも違うのか、私にはまだわからなかった。

「俺が絶対秋山さんを笑顔にしてみせるよ。健斗のことなんか忘れさせるくらい」

「私は…忘れたくないよ。健斗のこと。でも、思い出にしないといけないんだね。せめて、伝えておけばよかった…。隣にいることが当たり前すぎて、私気づかなかったんだ。健斗のことが大好きだったんだよ。」

私の目からはぽろりぽろりと涙が溢れてきた。

篠島くんは頬をぽりぽりかきながら私の目の前の机に少し腰掛けながらぽつりぽつりと語る。

「健斗は…秋山さんに告白されてたら困ってたかもしれないよ?」

「なんで?」
少しの間があったが、やがて篠島くんは口を開いた

「健斗は確かに、秋山さんと仲も良かったけど、友達としか見てなかったからな。告白してもらっても、気まずくなってただけだよ。」

そんな…健斗は私のこと異性として見てなかったんだ。

当たり前か。ずっと一緒に居たんだもん。

私だって健斗を異性として見ていたなんて、失うまで、気づかなかったんだから。

「それでもいいよ。もし、いつかまた会えたらこの気持ちを伝えられたらいいな…」

私は窓の方まで歩いて行き、夕日を眺めた。

どこかで健斗も同じ夕日を見ていると思いながら。