私はあの日のことを今でもはっきり覚えている。
「千紗ちゃんのことだぁいすき」
幼稚園の帽子を被ってた、簡単に大好きなんて言ってしまう、幼稚園生の健斗
「千紗ちゃん、早く行くよ。」
ピカピカのランドセルを背負った小学一年生の健斗
「千紗早くしないと置いていくぞ」
長年使ってボロボロになったランドセルを背負った6年生の健斗。
「千紗に写させてもらった宿題間違えだらけだったぞ。バーカ。」
中学生になって口の悪くなった健斗。
私の人生、物心ついた時には既に健斗はそこにいた。
家も隣同士、幼稚園からずっと一緒。
「そんなこと言うならもう見せてあげないからねっ!」

「悪りぃ悪りぃそれは困るから。また見せてくれよな。」

「しょーがないんだから、健斗は。」
そんな、当たり前に交わされていたやりとりが今となってはもう、出来ないんだ。