「はぁ……伊希,ねぇ…」



思い出すように呟いて,愛深は俺を見た。



「なに?」



そう気になって尋ねると,幸せなことでも思い出すようにふわりと笑われる。



「あのね,私,実を言うと伊希が初恋かもしれないって思ったことあるよ。大きすぎる衝撃の反動で。言っても2週間で勘違いは払拭できたけど」

「なんの話?」



情報が多い上に,俺にとってあんまりいい話しにも思えない。

そのめちゃくちゃな語りがどこにたどり着くのかと,少しそわそわする。



「でも勘違いだっていう裏付けが出来たのは高校に入ってから。悪魔の証明みたいなものだよ。してない証明は,自分でも出来ない」



再度間を置いて,愛深はいたずらに笑んだ。



「なんで,出来ない証明が,出来たと思う?」