「あの,態度って言うのは?」



確認の声色。

じっと俺を見るその顔が真剣で,大したことじゃないと自白したくなった。



「遠慮なく肩叩いたり,うで引っ張ったり。弘にはするかもしれないけど,俺にはそんな風に軽々しく触れたりしないでしょ」



気まずく思いながら話して,気がつく。

本当にただ,拗ねてるだけみたいに聞こえる。

そんなはず無いと首をふると,



「や,それはだって」



愛深はさらりと答えを渡そうとする。



「特別じゃん,暁くんは。私だって,恥ずかしんだよ。そんなの」

「ん……そ」



今恥ずかしいのは,どっちか分からない。

わざわざ連れ出して,こんなことを言わせて。

愛深も愛深で,そんなことを言うときばかり,当たり前のように涼しい顔をするから。

言葉につまった俺は,誰にも顔を見られないよう,体操座りをしたうでの中に顔をうずめた。



「暁くん」



いつもの数倍不思議そうな声。

仕方なく顔をあげると,この上なく心外なことを言われる。



「仲間外れみたいで,嫌だったの?」

「は? そんなわけ」



頭まで通すまでもなく,眉を寄せる俺。

けれどそれを遮るように



「私が遠く感じるの,寂しいって思ってくれた?」



嬉しさを隠しきれない愛深の声がした。

どうゆう意味でいってんの? 

なんて,考えて無駄なのは俺の方だって,もういい加減理解している。



「……はぁ。まぁ,愛深がいなくなったところで寂しくはないけど。急にいなくなっても変だから,近くにいて」



せめて,そうして。

俺の言葉に,愛深は心底嬉しそうに微笑んだ。



「あ,そうだ。あいつね,伊希って言うんだけど,大好きな彼女がいるから心配しなくて良いよ。しかも結構長いの」