「なんで,俺の時とちがったの」



続く会話。



「何が?」



愛深は飲み込めないように,きょとんとした。



「俺の時に変だった訳じゃないけど,服装とか,態度とか」



そう言う俺に,しばし考えた愛深は



「あ…」



思い当たる節があるように,嫌なそうに顔を歪める。



「なに」



ちゃんと,答えて。

前のめりに,尋ねる。

それだけ押しても,まだ惑う愛深。

そんなに言いたくない何かがあるのかと,俺も待った。

やがて,諦めたようにうぅと唇をつき出して,ぽつぽつと話し出す。



「昨日の私がデフォルトなの。だけど,気合いはいってるように見えて嫌かなと思って,暁くんの時はラフな格好を選んだの」



知られたくなかったと恥ずかしそうに項垂れて,愛深は俺から目をそらした。



「つまり,意識しないように見せてたのが,逆に意識してたってこと?」

「ぅっぅぅん」

「どっち」



率直すぎたのか,愛深は微妙な反応を返す。

自分でも不思議なくらい,白黒つけろと迫ってしまった。

こんなこと聞いても,何にもならないはずなのに。



「そう,だよ?」



ほっと息をはいて,見上げるようにもたされた返答。

恥ずかしそうに瞳を揺らし,赤くなった顔に口をすぼめる愛深。

しまいにはぎゅっと膝を抱えたその様子に,耐えられなくなった俺は顔ごと視線をそらす。

次に顔を見たときにはもう,愛深はいつも通り,あの不思議そうな顔で俺を見ていた。

鼻を摘まんでやりたい衝動にかられる。