「愛深は俺のなんじゃないの?」
            
            

考えた末に出てきた最初の一言は,自分からしてみてもばかみたいで。

愛深は愛深で,誰のものなんてことはない。

それも,1度フッたきりの俺に言えたものじゃない。

それなのに,躊躇ったその子供みたいな言葉を回収することも,俺には出来なかった。
        
             
             
「……そうだよ!」    
            
             
              
愛深の立場なら何を考えてどう怒っても言いはずなのに,愛深は満面の笑みで俺の言葉を肯定する。

呼吸を止め見つめると,にこりと返ってきた。

              
           
「はぁ。そ」
             
「うん」       
           


馬鹿馬鹿しくて,素直で,何も考えていないようで,自分より俺を優先して。

何よりも,愛深らしい。

呆れてるだけのはずなのに,どこか目元に柔らかな温度がプラスされる。  
          
俺は深く息を吐きながら,溝の奥の,少しのアスファルトの上に座った。
              
愛深が当然のようにそのとなりに座る。