そうじゃ,ない。

別に腹が減ったからわざわざ声をかけた訳じゃない。

呆れている間にも弘はきりかえ早く片付けを始めて,2人を呼びに行ってしまった。

ま,いっか。

元々それを目的で集まってるし,それを果たした後の方が別れやすい。

また,来た道を戻る。

汗をかくほどの距離もない道を,暑いと思いながら。



「何食う?」

「俺たこ焼きー」

「俺カステラのミニボールみたいなやつー」

「へぇそんなんもあんの」

「紐引きしてぇ~」

「サメ釣りだろ~」



分かれるか。

サクッとその決断に至って,俺達は四方に散った。

……イカ焼き。

きょろきょろと自然にその文字を探して,ピタリと止まる。

食べたこと,ないくせに。

進んでいた方向に,真っ直ぐ目を向けた。

たこ焼きにしよ。



「お昼なに食べる? あったこ焼き割り勘しない?」 



前方から聞こえた声。

あまりによく知ったその声に,俺は人の多い道で,ピタリと止まった。