「愛深~!」



やがて,グラウンドへ戻ると,そこにはもう,テントを片付ける大人と,生徒が数割り程度しかいなかった。

そこには愛深もいて,慧が忠犬のように走っていく。

ーぎゅっ


俺も追いかけるように走ると,慧は勢いそのままに愛深へと抱きついた。



「ごめん。最後だから……」



久しぶりで戸惑う愛深も,そんな風に弱く頼まれては,拒否することも出来ない。



「屈んで?」



そんな願いも,無防備にきちんと聞く。

ーちゅっ



「えっ」



おでこへ落とされたそれに,愛深は目を丸くして硬直した。



「へへっ昔いっぱいしてくれたお返し。結局初恋は失恋になっちゃったけど,大好きだよ,愛深。恋人はもう諦めるから,ずっと友達でいてね」

「……うん! 私も大好きだよ。もう慧は一生親友だから! リレーも,1位おめでとう。すっごくかっこよかったよ!」

「うん。ありがとう」



慧が愛深のお陰なんて笑って,愛深のように数秒固まってた俺は愛深の腕を掴んだ。

もういいでしょ。

そう,慧へ向けて。




「愛深,もう返してもらうから」

「うん,いいよ」



慧は,どこかスッキリした表情で俺に返事をする。

もうちょっかい出さないのはいいけど,やりすぎ。

愛深連れて歩いたのは,いつかと同じ校舎裏だ。