その確認を含めて,タイムを測っていた生徒の結果を聞く。
肩で息を続けるも,直ぐにはおさまらない。
ちらりと目をやると,同じ様に肩で息をして膝へ手をつく慧が悔しそうにしている。
「くそっ全然だめだった~ぁ!」
吐き捨てるように,慧が叫ぶ。
俺は次の生徒の邪魔にならないように少しずつ歩き出した。
「気はすんだ?」
真っ直ぐ顔を向けて,慧へ尋ねる。
このまま諦めてくれたらいいと思った。
ふっ
突然慧は俺に挑発するような笑みをむける。
驚く俺に,慧はいたずらに笑った。
「愛深,俺に言ったんだよ。付き合ってる人がいたとしても,気持ちを伝えたり振り向いてもらえるように頑張るのは悪くないって。
なら,この勝負なにも賭けてないし,好きな人がいる人に告白してもべつに悪くないよね?」
は……
言いたいだけ言うと,俺の返事も聞かず,あいつは走り出す。
俺はただ,それを茫然と眺め,立ちすくんだ。
それは驚きからか,はたまた愛深が慧のものになって俺から離れる恐怖からか。
どうなっても,俺には止める権利など無かった。
俺は1人,ことの顛末をそこで眺めることになる。
少しだけ,真っ直ぐで素直な慧を羨ましく思って。