約束の当日はしっかり晴れて,予定通り50mの測定が行われた。

男女各2人ずつの2ペアが,順番に走っていく。

適当に振り分けられた俺たちの順番もすぐにやって来て,俺は白線の前に立った。

珍しく緊張して,ドクンと心臓が鳴る。

俺は集中するために,すぅと息を静かに吸った。

始まる。

空気から感じ取って,俺は最後にふぅと息をはくと,前をしっかりと見据える。

慧がちらりと俺を見た。

どんな顔をしているのかは分からないけれど,多分慧も同じ様に前だけをみている。



「よぉーい……」



担任の,普段と変わらずやる気のなさそうな掛け声。

ーバサッ

スタートはそんな,安そうな旗があげられた音できった。

ードッ

走り出しは,同時。

すごい瞬発力と気迫を最大限発揮して,そんな俺たちに隣の女子ペアが戸惑う。

女子の結果に影響を与えたかもしれないのは悪いと思うけど,そんなことに気を取られ続けるほどの余裕もない。

慧とほぼ互角で並走する。

慧は普段からうろちょろ駆け回っているからか,見た目以上に早かった。

ゴールを直前に,俺は行けるーーと思う。

最後に一呼吸して走り続けると,そのまま俺はゴールした。

慧に,ほんの少しの差をつけて。