弘みたいなことを言う。

俺だって…

突然宣言した慧は,言い返そうとした俺を遮るように叫んだ。



「一方的に気持ちを享受するなんて,いいわけないだろ!! 
……明日の男女合同の体育,体育祭に向けての50mの測定だよね。俺と,ペア組んで。勝負して。賭けるものなんて何もないけど,愛深が好きなら受けて」



宣戦布告だ。

そう告げるように,慧はふんっと力んだ。



「……いいよ」



めんどくさいけど,意味なんて無さそうな勝負だけど。

……俺も,慧には絶対負けたくない。



「おお,唯兎。遅かったな」



教室に戻ると,真っ先に弘が気がついた。

遅れて,健がその後ろを歩く慧に気がつく。



「なんかあったの?」



ミートボールを口に放って,今度は俺をみた。

嫌々ながら軽く説明すると,2人は目を見開いて,神妙に頷き合う。



「じゃあ弘のペアは俺な」

「んー。よろしく」



健は軽い口調で,生まれた絶妙な空気を上手に流した。