昼休みのついでにトイレに向かうと,その後を追うように慧がついてくる。

用を済ませて廊下へ出ると,やっぱり俺についてきていたのか慧が立っていた。

普段なら俺に近づいたりしないのに。



「なに」



俺をみるばかりで口を開かないから,仕方なくぶっきらぼうに尋ねる。

ここではダメな理由でもあるのか



「着いてきて」



と慧は1人俺に背を向けた。

黙って従うと,連れていかれたのは狭い階段の踊り場。

その慣れた足取りに,放課後愛深と利用していた場所かとすぐに分かる。

こんなところで……

そう思うと,ふつふつと不満が浮き出た。



「で,なんの用なの」

「愛深の事だよ」



間髪いれず,慧が俺を見る。

その瞳は,いつもニコニコしている慧と正反対で,今はキッと癇癪を起こした子供みたいに俺を睨み付けていた。



「唯兎見てると,ムカつくんだよ! 愛深にあんなに想われてるくせに!」 

「は」

「唯兎みたいな愛深に甘えてるだけのやつに,自分は何にもしてないだけのやつに,愛深は渡さない!」