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「愛深~!」



登校直後,慧がいつも通り,いやそれ以上のテンションで愛深の元へ走る。

バタバタと鞄を自分の席に置く慧は慌ただしく,目立っていた。




「おはよう」

「おはようっ」



ゆったりと声をかけた愛深。



ーぎゅう



慧はそんな愛深を躊躇なく抱き締める。



「どうしたの? なんかテンション高い?」



その力強さに,愛深も不思議がっていた。

その2人の様子に,開いた口が塞がらない。

耳の付け根が頭痛のように傷んで,顔を歪める。

いい加減,愛深も自分の無防備さを自覚して欲しい。



「うん。いっぱい考えてスッキリしたから」



どことなく晴れやかな顔に,浮かぶ。



「愛深! あのね,俺,愛深のこと好きだよ」



いつまでも燻っている俺と違って,慧はいとも簡単に口にした。

ゾクッと,感じたことのない爆発的な感情が生まれる。

弘と健は驚き,そして困ったように息を呑んだ。

未だ理解していないらしい愛深だけが,きょとんと返す。



「あり,がと? 私も好きだよ」

「ちょっ」 「そういうことじゃなくてっ」



弘と慧,どちらが早かったか。

でも,俺の方が早かった。



「愛深」



未だ揺れる感情を必死に抑えて,静かに名前を呼ぶ。



「はいっ」



驚いたように反応しながらも,愛深は真っ先に笑顔で俺を振り返った。

顔をそらしたくなって,小さく唇を噛む。