そんな俺に,慧が珍しく食い下がる。
「関係ないでしょ。愛深が嫌がってないならいいの」
かくいう俺も,少しだけムキになった。
「関係ある」
「なんで」
「……愛深が俺のだから。ベタベタしないで」
「そういう思わせぶりなの,良くないと思う」
「それこそ慧に関係ない」
「ある!」
「なんで」
「俺は愛深が大事だから!」
俺は眉を寄せる。
どういう意味? って聞くわけにもいかなくて。
上手く納得させられて,悔しい。
「はいはい。お2人さん。そこまでにしときな」
「そうだぞ唯兎。ところで初恋の相手探しは終わったの? どんな人」
そこで,仲介するように健と弘が揃ってやってきた。
一瞥だけを送った弘に,何で俺だけと不満を向ける。
その横で,慧は弘に力強く捲し立てた。
「童顔でちっちゃくて笑顔が可愛くて良い匂いのする先輩!」
慧は怒っているからか,いつもより少しうるさい。
「まさか……」
弘は心当たりがあるのか驚いた顔をする。
その反応が意外で,俺も睨み付けていた顔の筋肉を少し緩める。