あれから一週間。
慧は一目惚れした相手の名前を知ろうと,その人を探しているらしい。
というのも愛深から聞いた話で,相変わらずベタベタしているのが癪に触る。
愛深も慧にはすっかりなれて,隙あらば話しかける慧に,抱きついて来られても受け止めて頭を撫でたりするようになった。
健と弘に
「なんか前より仲良くなった?」
なんて言われても,素直に喜んでいる。
「愛深~!」
あ,また。
お昼休み,飽きもせず慧が愛深に走りよっていく。
がやがやとした教室で,あまり気にされてはいないけど。
俺はつい,そっちを見てしまう。
「はいはい,なんか良いことあった?」
いつになく爛々とした慧の目を見て,愛深は首をかしげた。
「あのねっ…」
「ねぇ」
愛深に詰め寄る慧を見て,俺はとっさにその腕を後ろに引く。
そのまま何となく間に割り込むと,愛深と慧は正反対の反応を見せた。
「暁くん」
「また唯兎? なんなの」
顔を歪める慧も,最近では珍しくない。
邪魔されているのが気に食わないだけは,また別の感情なのか。
「近い」
ふいと顔をそらしながら,自分でも子供っぽいと思う。