「ちょっと愛深っ! 聞いてよ!」



置き去りにされていた慧が,存在を主張するように喚く。

そして愛深の視線は奪われた。



「あーごめんね。で,どうしたの?」

「俺,好きなひと出来た! 初恋なんだけど」

「「「は?」」」



聞き捨てなら無い言葉に,愛深以外の外野な俺達が声を上げてしまう。

今の言葉に違和感1つ感じない愛深は,なに?! と驚いていた。

なにじゃないよ,愛深。

いい加減,あらゆるものに敏感になって。

慧に好きな人なんて,外に出来るはずがない。

だって誰がどう見ても,慧が好きなのは愛深だから



「え,こいつやばくね?」



確認しなくてもヤバイに決まってる。

俺は,俺も長い間気付いてなかったことを棚に上げて,ふいと顔をそらした。



「どう思う? 本気で言ってると思う?」

「……はぁ。めんどくさ」



弘に話をふられるも,答えたくない。

気持ちを表すように,また1つため息が出る。



「愛深,話聞いて! 相談したい」

「えー? まぁ,いいけど」

「なぁ,俺らもいい?」



その横で話はまた進み,空気を読まないメンタル鋼のバカが声をかけて



「なんで? 健達はまだあんま知らないからムリ」



撃沈した。

その様子を,のほほんと愛深は見守っていた。

反対に,ざまあみろと俺は小さく笑う。



「お前,どうするよ。めっちゃハッキリ断られたぞ。俺ちょっと傷ついた」

「健どんまい」

「知らない。ってか帰る」



さめざめと泣き真似をする健。

軽く流した弘を置いてすたすたと歩けば,何故か弘と健は子分のように追いかけてきた。