放課後が来ると,今度は廊下からどたばたと騒がしい音がする。

帰ろうとしていた俺は,ぴたりと止まった。

こんな子供みたいな行動をする人は,1人しかいない。



「愛深っ愛深!」



案の定クラスの前で止まった足音,飛ぶように入ってきた慧は,一直線に愛深のもとへ駆け寄った。



「もうなに。今度はどうしたの」



ぎゅっと愛深の手を取って,慧はずいっと愛深に顔を近づける。

ムッと眺めれば



「俺っ俺! きっき自販機が小銭で!」

「落ち着いて。なに言ってんのか全く分からないから」



愛深は支離滅裂な慧を宥めていた。

そこに変なテンションの健が果敢に突撃していく。

あ,とめんどくさい雰囲気に追いかければ



「はいそこ,離れなさ~ぁい。現行犯ですよー」



愛深は驚いたように言葉を止めて健を見た。



「うるさ。調子乗りすぎ」

「あ,愛深。俺ら同盟くんだから」



面白そうと真逆の感想を抱いて着いてきた弘が,ひらひらと軽い口調で手を上げる。



「それは前も聞いたけど。なんの同盟?」

「「妹を見守り隊。ついでにふぉいの行方を見守ろうの会」」



同盟ですら無くなっている名前に,愛深は更に疑問を深める。

なんでそんなあやふやな設定で声が揃うのかも謎だし,付き合わなくったっていいのに。

バカ正直な愛深は,まともに取り合って2人を見ていた。



「ふぉいってなに」

「「それは秘密」」「知らなくて良い」



余計なことを言われてはと,口を挟まざる終えなくて。

間髪入れず邪魔をした俺の隣で,2人が声揃える。

それが余計に腹立たしいと文句を言おうとすれば



「暁くんは知ってるの?」

「……知らない」



愛深が俺を見たせいで,俺は態度を軟化させた。

笑うしかない愛深に,それでいいよと心で伝える。

そのまま何もかんがえないで。