これといったハプニングもなく,それぞれが適応し始めた1週間。

クラスの中は至って平和だった。

俺の心うちとは違って。

授業の合間の休み時間になると,愛深のもとへ慧がやって来る。



「愛深っ見て!」



昨日やったばかりの,今朝返却された英語のテスト。



「わっすごい。ほぼ満点じゃん。私英語だけは壊滅的なんだよね」



掲げられたそれの点数を見て,愛深も望まれた通りぱっと笑顔になった。



「そうでしょ?」



よく懐いた犬のように,弟のように,ひいては彼氏のように愛深に甘える慧は1つ得意気に笑って。

愛深の前に屈んだ。

表情の固まる愛深を怪訝に見ると,それは驚愕に変わって



「出来るわけないでしょ!? もう高校生だよ私達!」



意図を察した様に顔を赤くした愛深は,悲鳴にも似た声をあげた。



「なにしてんの」



黙っていられず,声かける。



「あ,そっか。確かにそれは俺も恥ずかしい」



散々非常識に振る舞っておいてと,俺は愛深と共に呆れた。

けれどそれよりも,慧の言葉が引っ掛かる。