パッと慧から離れる愛深。

それじゃあ遅いんだよと俺は動く。

何されたのか理解が及ばないように真っ赤になった愛深が耳を押さえた。

だから何度も,警戒心持ってって言ったのに。

慧がやらないから愛深が説明していただけなのに,それが子供みたいに退屈だったのか,慧は愛深の耳たぶを挟んで……

思い出すだけでも最悪な気分になる。



「あ,ごめん。なんか分かんないけどつい……噛んだかも」



ついってなに。 

ついなんかじゃ許されない。

愛深の反応,回りの反応。

全てセットで重罪だ。

ねぇ,ちょっと。



「ちょっとどいて」

「イッた」



俺は静かに呟いて,強引に健を押しどけた。

……健,邪魔。

愛深に手を伸ばすと,愛深はこちらを向き,俺とその後ろを視界に映す。

ようやく手の届いた愛深の腕を引いて,俺は愛深の頭を抱えた。

ぽすっと愛深の鼻先が胸板に当たる。

いい加減,愛深を返して。

愛深に触らないでくれない。