と,健は俺の前で,一切の遠慮と躊躇無く愛深の頬を両手で潰す。



「ふぁーにふるの」



愛深も愛深で,驚きながら,けれど振り払うどころか嫌がる素振りもない。

払い除けるくらい,すればいいのに。

お陰で俺の方がはらはらとしてしまう。

だからと言って口を挟む事も出来ず,俺はぐっと右手を握った。



「なーんか,自己評価低いんだよな,お前。さっきも言ったけど可愛いんだから,それを好きと捉えるやつも1人くらいいると思うよ?」

「あ,ありがと」



ちょっと嬉しくなったのか,愛深は微笑して。

それがやっぱり,ムカつく。



ーペシッ



また遠慮の無い行動。

突然頭を叩かれた愛深は,その場所を両手で押さえて,上目で健を見る。 


「いたっ。健くん,なにするの」

「お前ポジティブに捉えた上でなんか諦めたろ今」

「いや,諦めたって言うか……」



事実?

と自分でも分からないように首をかしげた愛深。

その後も,何故叩かれたのか分からないようにはてなを飛ばしていた。

その愛深を,健が楽しそうに笑うのが見える。

ざわりと,唾が喉を落ちた。