あー、真由香は1ヶ月テニスか〜
お兄ちゃんも来てないし、すれ違うかな?
2人でいるとこを見ないからみんな付き合ってること知らないし……
「真由香、ご飯でも食べに行く?
この間多恵ちゃんとの時、私は行けなかったし」
「いいよ、あっ、じゃあ、家においでよ
話したいこともあるし」
「ん?」
少し歩いて真由香のアパートに到着した
「狭いけど、どうぞ」
「近いね、お邪魔します……
綺麗にしてるね」
「物が少ないからだよ、亮介さんの部屋も綺麗だったから穂乃香も綺麗好きなんじゃないの?」
「私はそうでもないかな、普通……お兄ちゃんの方が綺麗好きかなぁ」
小さなテーブルを出してきた
「サークルの曜日も決まったし、そろそろバイト探そうかなと思ってたところにテニス部なんて、中々難しいね」
「正臣さん曰く、やっぱり助っ人は経験者を行かせるって方向だから1度行けばわかるんじゃないかなー」
「そっか、バレーみたいな団体競技は人数が足りないってことはないもんね
ダブルスとかある競技になってくるのか……」
「まあ、過去の見てみたけどそんな感じね」
「1回生と組むって言ってたから楽しみ」
「真由香はすぐ友達できるからね〜
あっ、多恵ちゃんとの食事どうだった?」
「それがね、聞いてよ……」
真由香は多恵ちゃんとの食事で偶然会って男の人といた所を見られて夜中に亮介さんが来たことを話した
「……はぁ、我が兄ながらさ、バカなの?」
「そう言わないの(笑)」
「私の元カレみたいに手を繋いでたとかなら怒っていいけど一緒にいたくらいで……
心が狭い、自分は今まで遊んでおいて」
「でも、亮介さんはやっぱりサッカーが好きだし、仲間も大切なのよ
それは理解してあげなきゃって思う」
「……私はもっと素直にお兄ちゃんにビシッと言ってもいいと思うよ
我慢はよくない、いつか爆発するよ
それにお兄ちゃんなら怒らないから大丈夫だよ?」
「でもさ、亮介さんだって全部女の方から別れたわけじゃないじゃん?
自分からでも別れを切り出してるでしょ?」
「まあ、やっぱりお兄ちゃんの我慢にも限界はあるよ
私でも何人かはお兄ちゃんから別れた人の名前とか顔を知ってる人もいるのは確か
怒りはしないけど嫌になると関係を断ちたがるから別れちゃう」
「女が別れたくなくても?」
「うん、無理って思ったらすぐ別れてしつこくきたらブロックよ」
「冷たいの?」
「しつこくきたらよ(笑)でも別れるのは早いかな」
「じゃあ、わがままなんだ」
振られるとは言うけど振ってる方が多いのかもしれないな
「そうとも言う」
「穂乃香ん家って何をしてるの?
亮介さんは小学校の先生になりたいとか言いながら家も継ぎたいとか……」
「塾を経営してるのよ
お父さんの後は自分がって……いずれね、歳をとってからだと思うわよ」
「じゃあ、何で自分の塾でバイトしないで家庭教師してるの?」
「友達に頼まれたからだって」
「人がいい(笑)」
「あっ、そうだ真由香うちでバイトする?
夏休みとかは人を募集してるよ」
「ほんと?やってみようかな」
「じゃあ、夏期講習のバイト話しておくね」
「履歴書書いておく……
そうだ、私、穂乃香のお母さんにサポーターを返しに行きたいんだけど亮介さんが忙しいから私1人でも行こうかなって考えてたとこなのよ」
「お兄ちゃんと来るのがいいと思うよ
紹介したいんじゃないかな」
「彼女として紹介か……
他の元カノさんとか紹介した人はいるの?」
「紹介まではないけど結構付き合ったらお母さんには具体的には話してるみたいよ
中学とか高校はたまーに遊びに来てた子もいたけどサッカーで忙しかったからしょっちゅう家に来ていたわけでもなく
でもお母さんのチェックが入るかな(笑)」
「合格出来るかな」
「お母さんとお兄ちゃんは性格も似てる」
なるほど……ヤキモチ妬いたのもそうなんだ
早く会ってみたくなった
真由香の作った夕食を食べて、穂乃香を駅まで送っていった
1週間後、亮介さんから電話がかかる
「真由、うちでバイトするの?」
「うん、穂乃香に紹介してもらいました」
「言ってよ〜僕に」
「だって、塾してるの知らなかったし、会って言いたかったし……
今週会えてないでしょ?
あとサポーターの件もいつになるか相談したいし」
亮介さんは黙ってしまった
嫌な気分にさせたかな?
「ごめんね、6月に最初のリーグが終わるんだ、その後でいい?」
「4月にお借りして6月ですか?
遅くないです?」
「そこはちゃんと母さんに理由は言っておく」
「穂乃香がいれば真由が1人で行ってもいいんですけど?」
「いや、紹介したいから僕とお願い……
待ってて」
待っててって言われちゃった
「じゃあ、お任せします」
久しぶりの電話だった
真由香もあまり頻繁にするタイプではないから、しつこく連絡されるよりはほどよい距離感なのだ
LINEは1日何かを送ってくれるのは付き合い始めてからは変わってない
すぐまた亮介から電話がかかってきた
「真由、忘れてた!バイトは夏休み午前中できるか聞いといてくれって言われてたんだった」
「うん(笑)、大丈夫ですよ」
「あと……好きだよ、真由、会いたい」
「あっ、ありがとう」
「じゃあね」
真由香は電話だったのに真っ赤になった
嬉しかった……
でも会いたいなら来てくれてもいいんだけどなぁ……
大学から近いのに
ちょっと欲が出たかな(笑)
でもこういうのも初めて出る感情だ
今度会ったときにさりげなく言ってみよう
6月の第2週の土曜日だった
今日でリーグが終わり明日、亮介さんの家に行くことになっていた
夜、亮介さんから電話がかかる
「明日昼過ぎに家に来れる?」
「はい、じゃあ、1時くらいでいいですか?」
あれ?電話の周りが賑やかだな
まだ外なのかな?
今日最後の打ち上げっていってたし
電話を見ると夜の11時だった
女の人の声もしていた
マネージャーとかかな
次の日の昼に真由香は亮介さんの実家に持っていく手土産を買い、マンションのエントランスを入り玄関の前でインターホンを押した
……ん?出ない
寝てるのかな?昨日遅かっただろうし
もう一度鳴らしてみる
真由香は携帯を出して電話をした
「ん〜もしもし」
眠そうな声だ
「亮介さん、寝てるの?鍵開けて欲しい」
「へ?真由?え?」
「おーい亮介が起きたぞ」
「亮介くん、ご飯食べる?」
「真由って誰だよ、どんな夢見てた?」
真由香は思わず電話を切った
帰ってきてない
どこ行ってるの……亮介さん
涙が自然にでてきた
グスッ、グスッ
帰ろうかな……でも実家との約束があるし
サポーター返さなきゃ
どうしよう……
こんなのでみんな別れちゃうのかな
嫌だなぁ
亮介からLINEが入る
“ 今帰ってるから待ってて、20分くらい”
20分て……それなら家に帰って寝れる距離じゃん
真由香は玄関前にしゃがみこんだ
少しすると真由香の携帯がなった
穂乃香からだった
「もしもし……」
「あっ、真由香〜何時頃くる?
お兄ちゃんの電話繋がらなくてさ」
「わかんない……穂乃香……わかんないよ〜」
「どうしたの?泣いてんの?真由香」
真由香は穂乃香の声を聞いてまた泣き出してしまった
「お兄ちゃんと喧嘩した?」
「喧嘩もできない……
家に帰ってきてないもん
グスッ約……束してた……のに」
「帰ってきてない?サッカー仲間のところ?」
「わかんない、電話切っちゃった……
でも周りに人はいた、女の声もした」
「夕食をね、家で食べるってお兄ちゃんから聞いてるよ
何を食べたいか聞こうと思って電話したの」
「約束は守るから……サポーターは返しに行くから」
「真由香、外で待ってんの?」
「うん……だって亮介さんの家で待ち合わせだったから」
「お兄ちゃんと電話は通じた?」
「20分くらいで帰るって、ごめん、もう大丈夫」
「真由香、怒っていいからね」
「どうしていいか……わかんない
付き合い方がわかんないよ〜」
エレベーターが開いて亮介がおりてきた
「真由!ごめん」
「亮介さん……」
真由香は涙を拭った
「真由香?お兄ちゃんと代わって!」
真由香は携帯を亮介に渡した
「誰?穂乃香?」
「お兄ちゃんのバカーー!
真由香を泣かせるな、何やってんのよーー」
「そっちに5時頃行くから、食べ物?
寿司で、じゃあ」
家の鍵を開けて真由香の腕を引っ張って玄関で抱きしめた
「ごめん、ごめんな真由」
「どうしていいかわかんないよ……
亮介さん」
「真由は悪くないから、寝坊した僕が悪い」
「寝坊?最初から泊まる予定だったってことですか?」
亮介は頷いた
真由香をリビングに連れていき、洗面所からタオルを持ってくる
「まだ亮介さんの知らない所はたくさんあるとわかってはいましたけど……
グスッ……真由が子供なのかな」
「違う、真由は悪くないよ
全部悪いのは僕」
「じゃあわかるように話して下さい」
「うん……
大学に入った時に1年6人とマネージャーが2人いたんだ
みんな仲良くてしょっちゅう集まってご飯食べに行ったりしてた
そのうち部員とマネージャー1人がカップルになって……
ある日試合会場に向かっていたマネージャーは事故にあい車椅子生活になった
当然マネージャーの仕事はできなくなって部活は辞めた
でも友達関係はみんな続いていてね、ある時彼女の家の転勤が決まって……
でも彼女は大学卒業までこっちにいたいといって彼氏と自分の家で住み始めたんだよ
それからはサッカー部のたまり場になっていて、打ち上げの後なんかはよく行ったり泊まったりしてる」
「グスッ」
真由香は鼻水が止まらない
「俺がサッカー部を辞めた後も仲間に入れてくれてつるんでるんだよね
昨日はリーグ最終戦で、外で呑んだ後、そいつの家でリーグのビデオみたり遅くまで起きてて……
朝のタイマーを入れるのを忘れてた……
本当にごめん」
話が終わると亮介は正座した
「亮介さんはさ、結構サッカーを優先にして今までの彼女とかは別れてきたんでしょ?」
「……否定はしない、サッカーの時期はやっぱり多いかな」
「亮介さんのバカ……
そういうことは最初にいうものですよ」
「最初とは?」
「今日とかだって泊まるのがわかった時点で連絡するとかです!
友達の家に泊まってるなら家に亮介さんが帰ったら真由に連絡をくれればいいことでしょう?
多少寝坊したって真由は連絡あるまで家で待っていられます」
「あっ、そっか……」
「真由は朝が弱い亮介さんを知ってるし
サッカーを優先する亮介さんは嫌じゃないし
理解してあげたいんです
好きなサッカーをして欲しいと思うから…」
「ありがとう、真由」
「だから呑む前に言って欲しいんです
真由が泣いたのは、大事な日に家に帰ってなかったのと女の人の声です
亮介さんの朝ごはんを他の女性が作るなんて嫌だったの
だから全部話さなくてもいいんだけど……
どうしたら、こういうすれ違いがなく行動出来るかを考えて欲しい……です
あと、真由も昨日の電話の時に酔ってないか確認すればよかったと今思ったので、亮介さんだけが悪いんじゃないです」
「わかった、考えるね」
「あと……ちょっとだけわがままです」
「何?」
「週1回くらいは会いたい
1時間でも
コーヒー1杯飲むだけでもいいから」
亮介は立ち上がって可愛い事を言う真由香に抱きついたがやっぱり足が痛くて1度離す
「イテテッ……ちょっと待って」
「正座しなくていいですよ(笑)」
真由香はソファから床に降りて亮介の胸に頭をつけた
亮介も真由香に手を回す
「大学帰りとか……リーグ中なら練習前に週1回でも真由の家に寄ってコーヒー飲んでくれたら」
「うん、言ってくれてありがとう
寄るよ、もうない?」
「……あのね、さっき6人でよくその人の家に行くっていってたでしょ?」
「うん」
「いつも全員なの?」
「昨日は最終戦だったから全員いたけど、3人とか4人とか、バイトがある奴もいるしな」
「亮介さんには今彼女がいますね?」
「うん!可愛い真由〜」
ギュッと力を入れてくれた
「真由と会ってない日が長かったら1回くらいお友達を断るか早く切り上げるかして、真由と会えませんか?って話」
「あっ、そっかー」
「はぁ、亮介さんは人が良すぎです
一言だけ言わせてください……
穂乃香の真似をします、コホン」
「え?穂乃香?」
「バッカじゃないの!!」
「似てるー」
亮介は拍手をしていた
「ごめんね、もう言いたい事は言ったからおしまい(笑)顔を洗ってくる」
亮介から離れて真由香は洗面台に向かった
はぁ、真由が可愛いすぎる
亮介は冷蔵庫から水を出してゴクゴクと飲んだ
「やばい呑みすぎた……」
「前に懲りたって言ってたじゃないですかー」
真由香が戻ってきていた
「あっ、吐いてはないよ……最近よく呑まされるんだよね」
「次の日に用事がある時はちゃんと理由を言ってセーブする事も大事ですよ
今日は最初の大事な日じゃないですか
真由は緊張してるんですよ」
「はい、勉強になります(笑)
真由がキスしてくれないよね?」
「嫌です!覚えてますよね?」
「うん……じゃあ彼女がいる事を話してもいいかな?」
「え?」
「彼女との大事な用事って言えない……」
いつものしゅん顔だ
「それは……考えてみます」
確かにそうだ
真由が堂々と隣を歩けたら……
うん、考えよう
亮介さんにコーヒーを入れて渡す
「ありがとう」
「今日……」
「ん?」
「初めてお化粧したのに泣いて落ちちゃった
パンダみたいになってないですか?」
「大丈夫、真由はスッピンでも美人だし、全然変わらないよ
少しテニス焼けしたよね」
「うん、だから化粧をしたの」
「真由、シャワーしてきてもいい?」
「はい、どうぞ」
あっ、そういえば亮介さん、何も食べてない
真由香は冷蔵庫を見た
結局作り置きも作れてないから何も無いな
流石に材料が無ければ真由香も作れない
カップラーメンとかもないのかな
コンビニ行ってこようかな
「真由〜」
「はい?」
「今日泊まる?」
「明日2人とも一限あるでしょ?」
「真由が起こしてくれるだろ?」
「まあ、それは大丈夫ですけど……
帰る時間によって決めましょう」
「わかった」
「亮介さん、何も食べてないでしょ?
冷蔵庫何も無いから作れない」
「もう、いいよ、早めの夕食だから
お寿司を楽しみにしとく(笑)」
「あっ、そうだ、お寿司だ」