すると、突然、席を立ったちひろくんがわたしの後ろに回って。



「…っ、」

「じっとしてて」

「や、あの、」



少しひんやりとした指先がうなじあたりに触れてくるから戸惑う。



なんで、わたしはちひろくんに髪の毛を結ばれてるんだろう。

資料の上で静かに動く影を見つめる。
そんなに丁寧に結ばなくてもいいのにと思うほどゆっくり進む時間に耐えきれなくなって。



「じ、自分でやるよ」


もはや髪を結ばれてる疑問なんか気にしている余裕もなく、変わろうと手を伸ばしたら。



「俺がやりたいの」


有無を言わさず遮られてしまった。



「桃瀬さんの髪、邪魔だから」