「俺と2人で、文句でもあるの?」

「な、ないよ」



まさか、文句なんてあるわけない。
ただ、緊張するだけで。


……それに、わたしは、密かにちひろくんのことを好きだったり…するわけで。


言われたとおり横に座ったわたしは、今日もチラ、と盗み見る。







制服はきちんと着こなされていて、わたしよりも艶やかな髪の毛が窓から漏れる夕日に照らされてきらめく。
少し上を向くとのぞく、あごのラインと同じ位置にあるほくろも、今まで見たなかで一番綺麗な鎖骨も、男の子とは思えないほど、ちひろくんによく似合っていた。

やっぱり……カッコいい。



「桃瀬さん」

「っ、なに」


見ていたことがばれたのか、急にこっちを向いたちひろくんに反射的に肩が上がる。



「ゴム、貸して」

「え?」

「はやく」

「あ、どうぞ」



急かすような声に、わたしは腕に通していたヘアゴムをひとつ、ちひろくんに渡した。