こういうとこは、ほんとに憎たらしい。

表情だって、ぜんぜん余裕そうだし。

わたしだけ、あたふたしててバカみたい。




「今からどうしよっか」

「は、」

「恋人らしいこと、する?」

「こ、こいびと?」

「そうでしょ」

「そうなの?」

「そう、今から恋人」



勝手に決めないでよ。

心のなかですら素直になれない自分に苦笑い。


目を逸らした隙に迫ってくる新谷くんに驚いて下がったけど、後ろは白い壁だった。



「新谷くん…ここ、学校」

「うん、壁、冷たい?」

「え?うん、…って、そうじゃなくて」

「ふっ」



からかわれてる。

わかってるのに、見慣れた笑顔にすら、耐性がなくなったようにドキドキして。


もうやだ、いっそのこと、斜め上にあるカーテンにでもくるまいたい。


そう思っていたわたしだけど、そういえば、とあることを思い出す。