「……あー、まって、…ほんと」
そんなに隠してまでいやな顔しなくても、早く振ってくれればいい。
そしたら、わたしだって諦めがつく。
「俺のこと好きって、いつから?」
「わ、かんない」
いつからだろう。
自覚したのはサッカーをしていた体育の時で、好きになったのは、もしかしたら、もっと前なのかもしれない。
「俺に会いたかったって、ほんとに?」
「え……ちょ、」
近い。
さっきまで1メートルはあった距離が一瞬で詰められていることに戸惑う。
「あ、新谷くん」
「こたえて」
「なに、」
「俺に会いたかった?」
「っ」
好きな人の顔が目の前にあって冷静でいられるわけがない。
どんどん、後ずさるわたしの足。
「沙葉」
「……あい、たかった…」
消え入りそうな声でそう伝えると、見上げた先で、新谷くんの目が少し大きくなる。
なんで、こんな質問責めにあってるんだろう。
そう思った直後、
「俺も会いたかった」
「っ…」
ふわり、新谷くんの腕のなかに引き込まれた。
何度か瞬きして、そこではじめて、自分が抱きしめられていることに気づく。