授業の前にやるのは、3ヶ月に1度の席替え。
今回のくじ運は良かったらしい。
前から3番目、真ん中の列。
やっと新谷くんから離れられて、先生からの問いに答えられなくても隣から笑い声が聞こえることはないし、ふと隣を見たって、じーっと観察してくる新谷くんの目線もない。
これで万々歳のはずなのに、なぜか脳内には、さっきの新谷くんが浮かぶ。
………わたし、なんかしたっけ?
心当たりを思いめぐらせてみても、修学旅行で泣いてしまったことしかピンとくるものがない。
そもそもあの日のことを思い出すと、どうしても恥ずかしさが舞い戻ってくるし、背中に添えてくれていた手の感触とか、新谷くんの読めない行動ぜんぶ、考えるだけで、なぜか不自然に心拍数が上がっていく。
そのことで脳内を埋め尽くされるのはいやだから、なるべく考えないようにしてはいるけど。
それでも気になってしまい、一番前の列にいる新谷くんを見てみるけど、当然、後ろから表情なんてのぞけるわけもなく…。