その王子様と似ている雰囲気を纏っていたのが彼方くん。
最初に見せてくれた笑顔がそっくりで、絵本の中から出てきたみたいで。
だけど、彼方くんの隣はわたしじゃなかったみたいだ。
まだ幼かった頃の記憶を思い返していたけど、ほかの人を想う相手にすべてを語るのは気が引けるから、それっぽい言葉でごまかすことにする。
「わたしが好きな絵本の中の王子様みたいに誰にでも気遣いができる優しさと彼方くんらしい明るさが素敵だなーって思ったの」
「……ありがとう」
「うん。あ、もう謝るのはなしね? わたしはほんとに大丈夫だし、彼方くんは友達って思うことにしたし」
「…ごめん」
「だから謝らないでってば。これから先、もっと素敵な出会いだってあるだろうし。それに、好きな人がいるの知ってて付き合ってなんて駄々こねるほど、彼方くんのこと、めちゃくちゃ好きなわけじゃないんだからね!」