「ごめん…」
人通りのない場所まで来ると、申し訳なさそうに謝られた。
「やめてよ」
「俺、沙葉ちゃんの気持ち、ぜんぜん気づいてなかった…」
「い、いいよ、彼方くんは悪くないし」
「観覧車も誘ってくれたのに」
「それは、もう謝ってくれたじゃん。気にしないで、わたしは大丈夫だから」
気まずい空気になる。
これだから、知られたくなかった。
絶対、彼方くん、困ってる。
「……あの、ほんとに彼方くんが謝る必要ないんだよ」
「でも、」
「だって…」
だって、彼方くんの好きな人がわたしじゃなかっただけ。
わたしの気持ちに気づいてくれなんて無理な話だし、彼方くんが悪かったとこなんてひとつもない。
それにわかってしまった。
「彼方くんは、苗村さんが好きなんでしょ?」