…って、何で私ドキドキしちゃってるのっ!


絶対おかしい。完全に一ノ瀬くんのペースだ。



遅いと言ってもまだ7時前。夏だから外はまだ完全に暗くなっていない。


大丈夫なのに……一ノ瀬くんは心配性なのか、私をちゃんと家まで送り届けてくれた。


「じゃあな、また明日。」


「うん、また……」


「あら、叶愛?」


またね、のねを言う前に、私の言葉はお母さんの声によって遮られた。


「えっ、?、」


これ、結構危ない状況じゃない?


ただでさえ過保護が増したお母さんが、私が男の子と2人きりで帰っているところなんて見かけたら、本当に殺されちゃう。


「ごめん、一ノ瀬くん。逃げた方が…」


一ノ瀬くんにしか聞こえない声で告げると、一ノ瀬くんは一瞬私の顔を見てから、お母さんに向かって深く頭を下げた。