「店の前で騒いでないで、早く行くぞ。」


一ノ瀬くんは勝手に私の手を引っ張って歩いていく。


気づいた頃には……文香ちゃんたちとはぐれていた。


「一ノ瀬くんっ、文香ちゃんたち…」


「俺は、叶愛と2人きりになれたからいいけど。」


…やっぱり、口調が、なんか怒ってる。


「怒らせちゃったなら、ごめんなさい。」


「……別に。」


えぇ、どうしたら、許してもらえる?


えっと……


「一ノ瀬くん、着物すごく似合ってるね、かっこいいよ?」


「…本当に思ってる?」


「うん。」


嘘じゃない。さっきから通行人の人がみんな一ノ瀬くんの方を振り返っているし、私だって……不覚にもかっこいいと思ってしまっている。