必死に首を振る私に一ノ瀬くんは安堵の笑みをこぼして、それから、私の頭に手を置いた。


「叶愛、お腹空いただろ。」


「え??」


映画を見ていて、気づいた時にはもう5時。


「夕飯作る。何食べたい?」


一ノ瀬くんはテレビを消して、当たり前のように立ってエプロンを持ってきた。


「…何でもいいの?」


「ん、叶愛が食べたいものなら。」


………やっぱり、私に一ノ瀬くんは勿体ないよ……こんな素敵な人……


「叶愛?」


「あっ、えっと、野菜炒め……がいいな」


「野菜炒めな、了解。」


ニコッと笑った一ノ瀬くんは、すぐにキッチンに入っていって、私は手を動かす一ノ瀬くんをぼんやりと見つめていた。


「ん?どうした?」


私の視線に気づいた一ノ瀬くんに度々声をかけられる。