16 (特別な夏休み)


夏休みが始まって、少し経った日。


私はリビングのテーブルに課題を広げていた。


「できる所は終わらせたの、だから残り…教えてください」


「ん、じゃあまず英語」


最初から苦手分野を投入してくる一ノ瀬くん。


「うっ、」


「大丈夫」


シャーペンを握ったまま俯く私の頭を一ノ瀬くんがぽんぽんと撫でる。


「う、ん」


本当に大丈夫なのだろうか、なんて不安もあったけど、いざ始めてみると一ノ瀬くんの教え方は凄く分かりやすくて、予想より早く課題が終わった。


「お疲れ様」


当たり前のようにかけてくれるそんな言葉が心地よい。


「一ノ瀬くん、ありがとう」


「いーよ」


そう言いながら一ノ瀬くんは立ち上がる。


「時間余ったしさ、映画見ない?」