私は気分転換も兼ねて温室へと足を運びました。
 ここは薬草の研究のために作られたもので私の研究室でもあります。まだ学生で、学位も持っていないのですが、実は特許をいくつか持っています。

 温室の奥まで行くと赤や黄色、ピンクの蕾をつけているローナという花が見えます。根から花びらまで使える万能な薬草です。薬の材料やお茶、料理、化粧品にと用途も幅広く重宝されている植物なのですが、なぜかわが国には根付かなかったのです。そのため輸入に頼らざるを得ず、関税も高くつけられていました。

 そこで薬草に興味があった私はお父様にお願いして研究することにしたのです。
 その結果は成功。今は許可を出しているところに栽培をしてもらっています。おかげで関税も安くなり高価だったローナが一般に出回りやすくなりました。
 そしてローナをさらに普及させようと今研究を続けているところです。

 しかし、研究するにはかなりのお金がかかります。
 我が家でもできないことはないのですが、私も一応女性、いつかは結婚しなくてはいけません。貴族としても一生独身というわけにはいかなかったようで。

 私は研究ができれば結婚は必要ではないので、離れにでも住まわせてもらえればと話すと家族に反対されました。
 特に弟からは姉上が先に嫁さないと自分が結婚できないと凄まじい位に猛反対されました。というか、泣いていましたね。

 
 そういうこともあり、婚約したんですけれど……
 結婚できるうえに、事業提携が一致し研究費も惜しみなく出してくれるというテンネル侯爵家の嫡男エドガー様と……