ゆったりと寛いでいるところに読んでおきなさいとお父様から渡されたのは、婚約に関する契約書でした。

「えげつないですわ」

 小冊子のように綴られている契約書を読み終えた私はそんな言葉が漏れてしまいました。

 婚約する際に私も目を通しサインしたはずなのですが、こんなに事細かに条件が記載されていたとは思いませんでした。どちらかの有責で婚約破棄に至った場合の慰謝料の金額が半端ではありません。

 不動産の相場は分かりませんが、うちの邸や土地を売って賄えるものでしょうか? 
 とにかく莫大な金額には間違いありません。両家とも有数の資産家なので払えない金額ではないかもしれませんが、大きな損失を被ってしまいます。 
 こちらに有利な条件だったのでそこだけしか頭に入っていなかったようです。これからはきちんと契約書を読まなければいけませんね。

 ※問題発生時には両家の話し合いをもって解決する。

 最後の文言は何を意味するのか、ちょっと気になりましたけど。

 エドガー様はご理解したうえで婚約破棄なさったのですよね?
 大丈夫なのでしょうか?

 多少の心配はあるものの私ができることはあまりないでしょう。