私がほっとしていると周りから、おおっとどよめきが起こりました。ざわめきも聞こえます。拍手こそ起きませんでしたが、雰囲気はよさそうです。険悪なムードは感じません。ダンスパーティーが中断されたというのに、皆さん心が広い方たちばかりなのね。

「リリア。よかったな。君と結婚できるよ」

「はい。エドガー様、嬉しいです」

 二人はお互い微笑みあうと抱きしめ合いました。
 これが本当の恋人同士なのでしょう。完全に二人の世界です。素っ気ない態度であいさつを交わすだけだった私とエドガー様の仲とは全然違います。

「それじゃ、踊ろうか」

 エドガー様がリリア様に手を差し伸べると、リリア様ははにかんだように顔を赤らめながら手を重ねました。
 まぶしさに目を細めながらなんとか二人の様子をうかがい知ることができました。きっと、二人は幸せになられることでしょう。

 やはり、婚約解消してよかった。
 これ以上いてもお邪魔でしょうし、それでは退場いたしましょう。

「エドガー・テンネル、リリア・チェント。待ちなさい」

 踵を返そうとしたところで、学園長の声がしました。