「あっつ…」

バイト中

またいつもの様にパンを焼いていたら

オーブンで左手の指をやけどしてしまった








結局、小柴君から発せられた

「社会の歯車」という言葉が

ずっと引っかかったままで

頭から離れずボーッとしてしまい

熱々のオーブンに手が当たってしまった






いくら考えたって将来像なんか見えないのに

どうしても考えてしまう

私はこのまま何者にもなれず

ただ生きているだけなのかと





痛みが走る赤く変色した左指をみて

涙が零れた









熱いと声が漏れた時

店長が今までに見た事の無い様な焦った顔で

心配しに来てくれた









こんなに私に優しくしてくれる人が周りにいるんだから


大丈夫




大丈夫






私は何者にもなれなくても




平和に生きていけるから大丈夫









今日もそう、自分に言い聞かせる