「いらっしゃいませ
また来てくださったんですね」



目が潤んだままであまり見えていない状況の上に

急いで彼の元に駆けつけたから

途中テーブルに足を少しぶつけた




「はい!この前のパンめーっちゃ美味しかったんで、また来させてもらいました!」

彼は以前と変わらない太陽のような笑顔を見せる


「この前買ったクロワッサンね、めっちゃ美味しかったんで涼に1口あげたんですよ、あ、涼ってのは俺の仕事仲間なんですけどね
そしたら残り全部涼に食べられてしまって
ちょっと喧嘩になったんですよ〜笑
だから今日はね、涼の分も買っていってあげようと思ってて」

以前来てくれた時同様

彼はにこにこと流暢に話すものだから

いつの間にか目に広がった涙は消えていた



「えーまって!ミックスジュースパンとかあるやん!なにこれー!初めて見たー!」

「ああ、それは店長が
昨日の夜寝れていない時に
突然作り始めたやつなんで
私も味知らないんですよね(笑)
なんか危険な香りがしますよね(笑)」

「ええ!お姉さんも食べたことないんですか!めっちゃ気になる〜」

彼は得体の知れないパン(ミックスジュースパン)に目を輝かせると

辺りを見回しそわそわし始めた

「あの、この時間ってお客さんよく来ます?」

「いや、この時間はそんなにですね。
どうかしましたか?」




「あの…もし良かったらあそこで座って一緒に食べませんか?」


彼の指さす先には

うちの店に申し訳程度に置かれた

4席のイートインスペースだった






「ぜひ」







太陽に負けないくらいの笑顔で返事をした