「まさか、お前が裏切り者だったなんてな……」

マフィアが銃を手に近付いてくる。裏切り者がどんな運命を辿るのか、裏の世界を嫌というほど知り尽くした少年にはわかっている。ゴクリと唾を飲み込み、向けられている銃口を見つめた。

嫌でも体が震え、泣き出しそうになる。少年は戦闘はあまり得意ではない。そう、少年は。

「……こいつ、さっさと始末しろ」

マフィアの一人が命じ、二人の屈強な男が少年の腕を掴もうとする。少年は諦めたのか、俯いている。そしてマフィアの太い腕が少年を捕らえようとした時、少年が顔を上げた。その顔は、先ほどとは別人のようにニヤリと笑っている。

次の瞬間、少年は懐から一瞬で取り出した太いナイフでマフィアの腕を斬り付ける。血飛沫が飛び散り、マフィアが情けない悲鳴を上げた。

「ハハッ、チョロすぎ!」

少年は痛がるマフィアを楽しそうに見た後、コピーが済んだUSBメモリを抜き取る。そしてドアに向かって走り出した。