口調は強気だけど頭の中は真っ白でこの後どうするか全く考えていなかった。
バクバクと心臓は暴れていて傘もさしていないので髪やら服やらが濡れてとても気持ち悪い。これはあとで風邪ひくパターンだな。
オマケに桃菜ちゃんには素顔がバレちゃうし。とんだ災難だ。
朝陽ー………助けて………。
「よくもやってくれたな!」
「ひぃぃぃ!ごめんなさぃぃ!桃菜ちゃんー!」
「あ、心美ちゃん?ちょっと待ってよ!早いって!」
さっきまでの強気はどこへやら。
目の前のヤンキーが顔色を変えた瞬間、腰が抜けたようになり傘を拾い、桃菜ちゃんを掴んだまま隙を見て走り出した。
「あ、待てコラ!」
逃げることしか頭になかった私は必死で足を動かす。後ろで舌打ちした音が聞こえたけど気づかないフリ。
とにかくヤンキーのいない場所へと逃げたくて細道を走り、広場に出た。
「はぁはぁ………心美ちゃん、早い……」