脳内がフル回転でシミュレーションを開始する。
もし、用事とかなかったらだけどさ。
イルミネーションとか見に行かねぇ?
ほら、補習がんばったし。クリスマスだし。
いやまぁ時間があるならでいいけどさ。
よし、いける。
いけるぞ俺。
今度こそいけ!
昇降口に差し掛かり、いざ水原に声をかけようとした時。
「拓真!」
は!?
「佑香!?」
え、なんでここに!?
壁を背に立っている、どころか手まで振り出した佑香にわけがわからなくなる。
いや、手は振るなよ。
水原いるのに恥ずかしいだろ。
というより何か用があるなら、連絡すればいいのに。
わざわざ寒い中待ってる理由がわからん。
ごめん、ちょっと待ってて。
そう水原に言おうと隣を見たとき。
「ぁ……、私帰るね!」
ぴゅんっと走り去っていく水原。
「あ、水原!」
いきなりのことで理解が追いつかず、ワンテンポ遅れて呼び止めたものの、水原は振り返ることなく帰っていった。