それにはっと我に帰る。


「ここ、間違えてんじゃん」


慌ててさっき見つけた間違いを指摘すれば「あ、ほんとだ」なんて言って何事もなかったかのようにまた課題に視線を落とす水原。


その光景に、さっきのアレは見間違いじゃないよな?と不安になってくる。


さっき、たしかに水原は目を閉じたはずだ。

俺がキスしようとあんなにも近づいたのに。

俺を叩くどころか、目をつぶって。


まるで、キスされるのを待ってたみたいに。


……俺の勘違い?

いや、そんなはずはない。


でも目の前の水原は、こちらを見る前と全く変わらず課題に向かっていて。


俺に都合のいい幻覚。

きっとそうだ。

きっとそう……。


…………本当に?