「ケーキって……。人使い荒いよなぁ」
「ケーキ……。そういえば今日って……」
クリスマスだったんだ。
色々ありすぎてすっかり忘れてた。
……クリスマス。恋人たちにはもってこいのイベントだ。
……私たちって、恋人で、いいんだよね?
はっきりと言葉にはしてないけど、好きって言ったし。……言われたし。
だからきっとそうってことなんだろうけど、心のどこかでは、まだ今の状況が信じられなかったりもしている。
本当は聞きたいけど、こういうのってわざわざ言い出すことでもないような気がして。
ひとり考えあぐねていると、ふと隣にあった重みがなくなった。
気づけば正面に瀬尾がいて。
その顔を見たら、もう全部がどうでもよくなった。
「あ、のさ……」
緊張した声。
「うん」
「その、……今日、クリスマスってよ」
真っ赤な顔。
「……しってる」
全てを曝け出した瀬尾につられて、私もだらしない顔をしてるに違いない。
「だからさ、────」
辿々しくも愛おしい声によって、空いていた予定が幸せに満ち溢れていくのを、ただただ笑って享受したのだった。
〜fin〜