「ふっ」
堪えきれなかった笑いが漏れたような、そんな声だった。
思わずとった距離を埋めるように伸ばされた手が、ぽんっと頭の上で軽く跳ねる。
「んな顔すんなって」
キスできなかったのに、どこかそれさえも嬉しそうにくしゃりと笑う瀬尾に心が落ち着かない。
ていうか私、どんな顔してるの!?
そんなに変な顔してた!?
多分それで笑ったわけではないんだろうけど、それでも自覚のない表情というのは少し気恥ずかしい。
すぐに離れてしまった手の感覚に、もう少しだけと惜しく思うほどには浮かれていた。
「はぁーーー」
だから瀬尾が深いため息をついたのが聞こえて、何かしてしまったのかと思わず不安になってしまう。
「瀬尾?」
あまりにも感情が乗りすぎたことに気づき、咄嗟に後悔した。
「ん? あぁ」
でも身を寄せてくっついてきた瀬尾に、すぐに安心して。
その手に握られたスマートフォンが、メッセージアプリを開いていることにようやく気づいたのだ。