「はは、なんだそれ」

へにゃりと笑った瀬尾に、どうしようもなく愛おしい気持ちが込み上げてくる。


今、人生で一番幸せで。

それなのに、もっともっと、と。

それ以上を望みたくなるのは、欲張りなのかな。


「俺もすげぇ幸せ」

とろりと溶けたような瞳で見つめられて。
好きな人が私と同じ気持ちだと言ってくれて。


お腹の中でむずむずと燻る感情の塊が、今にも口から飛び出してきそうで。


好き。幸せ。嬉しい。

声にならない言葉がぱちぱちと小さく弾ける。


離れてしまったのが寂しくて、そっと瀬尾の手に触れれば素早く握り返された。


絡み合う視線が、お互いを離さないとばかりに徐々に吸い寄せられていく。


もう瀬尾しか見えない。
ずっとこのままで居たい。


唇まであとわずか数センチ。


気づけば肩に乗せられていた手が、ぐっとその距離を縮めようと力を込めたことに気づいて、恐る恐る目を閉じようとしたその瞬間。



"ピロンっ"


この場に似つかわしくない、やけに軽快な電子音が耳を震わせた。