もう1度、男はグビッとほうじ茶を喉に通した。
さっきは少し熱かったのか、勢いよく飲んではいなくて猫舌なんだろうなぁって。
けど、ようやく飲めるくらいには冷めてくれたんだろう。
「自分だけで終われないって、どういうことですか…?」
「だって最終的にそれを片付けるのは残された側だろ。
どんなに酷い姿だろうが、受け止めなきゃいけないのは遺族だったり、そーいう仕事の人間だってこと」
死んだ本人は死んだだけで終われるけど、生きてる奴等はそうじゃない───と。
そんなふうに言ってしまえる淡々さは、逆に落ち着くところがあった。
「まぁ、だからって“残された人間の気持ちを考えろ”なんて言うのも理に叶ってねぇよな。そう言ってくる人間に追い詰められてんだから」
大人なんだろうって思った。
私と違って彼は確かに高校生だけど、考えていることはずっとずっと大人。
たかが中学3年生の私には、すっごく遠い人に感じた。
「俺も今日すげー殴られた。見てわかるだろ、これ」
「……うん」
「あんなの集団リンチなんだよ。…さっさと捕まれ馬鹿野郎」