「学校でいじめられてんの?」


「ううん」


「親と何かあったか」


「ううん」


「なら…男に騙されたのか」


「ちがいます」



なにも無いんです。

そう、なにもない。


それなのに全部を終わらせたいって思うときがあって、全部がどーでもよくなるときがあって。

この先どうなるんだろうって考えると怖くて、そんな曖昧な理由だ。



「だけど私、今まで自分の意思で動いたことが無かったから…」



小さいときからそうだった。

歳の離れた年子の姉がいて、私は末っ子。


だからか世渡りだけは上手だった。

姉が出来なかったものを見てたから、無駄なことには手を出さないでおこうって安全な道だけをズル賢く歩いて。


あの子が無理なの見てたでしょう?だからあなたも辞めなさい、なんて両親には言われ続けてきた。



「部活だって、ほんとは吹奏楽部に入りたかった」


「…今は?」


「帰宅部のエースです」


「……はっ、いいじゃん」



でも楽器が高いから。

入るなら、姉のお下がりが使えるテニス部にしなさいって。

それが嫌なら帰宅部で塾に通ったら?なんて。