「……これ、どうぞ」


「お、悪い」



仕方なく私はビニール袋に入っていたほうじ茶を差し出した。

わざわざ買いに戻ることをしたくなかったから。


だってここは田舎の錆びれたコンビニだ。

この時間は店員さんも1人でやってるから、「あ、またこの子来たんだ…」なんて思われたくない。


そうやって周りに良い顔をして、恥ずかしい思いを極力避けるようにして、そうやって生きてる毎日は。


控えめに言って───…生きづらい。



「ふーー、あったけ…」


「あの…、お金、」


「あぁ、ちょっと待って」



半径1メートル離れた距離。


その人は、手がかじかんで上手くお金が取り出せないらしい。

差し出したペットボトルで温めるように両手で握っている。



「ごめん、もうちょっと待って」


「…そうやって払わない気なんじゃないですか」


「払うっつーの。怪我人には優しくしろってお婆ちゃんに教わらなかった?」


「お婆ちゃんはずっと昔に死んじゃったんで」