「お前はさ、この雪を見たとき“これは雪だ”って素直に思う?」
「…うん…?うん、おもう」
「それだけでいいんだよ。それだけじゃなく“明日積もるのかな”とか、“そしたら登校するに大変だな”とか、余計なこと考え出したらアウト」
不良のイメージが変わった。
きっと彼だって、今日の喧嘩はむやみやたらにやったんじゃなく。
誰か、何かを守るためにやったんじゃないかなって思う。
「なんでもそう。ただ見たものを見たままに感じて、思ったことを素直に思う。
それ以上考えるから自分を自分で追い詰めるんだよ、みんな」
ふわっと手のひらに乗った雪を握ることはせず、その人はただ自然に溶けてゆくのを待っていた。
同じように見つめていた私に、「なぁ」と声がかかる。
「ポツンとある夜のコンビニってさ、すげー幻想的に感じるときあるよな」
「…別に、普通です」
「お、言えたじゃん」
「え?」
自分の意思、と。
彼は口をパクパクさせて伝えてきた。
そうか、あえてそう言わせるために断定的に言ってきたんだと。
そこで合わせてしまったら今までの私。